欧州ブリードディスカスを飼いこなせ! Part2 


早速行ってみたいと思います。

さて、私の知っている方が、どうしてもロートターキスがうまく飼育できないと

嘆いかれてい時の話を例に、今回はお話しさせていただきたいと思います。

その方は水換え中心の飼育をされており(通常使用飼育水のKHが低いため)

アジア産ディスカスやワイルドディスカスの飼育では全く問題がなかったという事。

しかし、ドイツ魚ロートターキスを飼育し始めた所、即ではないが

徐々に魚が弱っていくというご相談を受けました。

遠方の方でしたので、その原因に関しましては、実際飼育環境を見る事もできず

推測の域を脱したものではないのですが、私が推測するに

欧州ブリードディスカスの飼育に絶対必要な何かがその方の水槽環境に

欠落していたのではないか?と推測しております。



実は、欧州魚には前出の寄生生物の他に、さらに不得意な物がございます。

それは、当店がバイオエースを構成する善玉菌をご紹介した時に

登場する『悪玉菌』が発生させる悪い代謝物です。

この悪玉菌が吐き出すもの(代謝物)に対してある程度耐えることが出来るディスカスと

あまり耐えられないディスカスがおります。


かつてのロートターキスなど、近親交配のみで累代繁殖される

『血の濃いディスカス』を扱うブリーダーたちは

徹底して『悪玉菌』が発生させる悪い代謝物の濃度が低い

極めて良い環境でその貴重な種を維持しております。


そのような環境でしか過ごしたことのないディスカスなどは

悪玉菌が吐き出すもの(代謝物)の濃度が高い環境におりますと

すぐ調子を崩してしまいます。


実は、この悪玉菌の代謝物というものほぼほぼ

どのよな観賞魚対しても害になるものですが

観賞魚それぞれがその毒害に対しての耐久力が違うだけなのです。



欧州ブリードディスカスは、悪玉菌の代謝物濃度が低い環境で育った魚たちです。

それはまさしく『ロートターキス飼育テクニック』でもご紹介している

”『バランスが取れ、クオリティの高い濾過』が作り出すディスカスにとって 

有害性の低い水環境”です。

悪玉菌が繁殖が抑制され、餌として水槽に入ってくるタンパク、脂肪、炭水化物などを

善玉菌が速やかに無害に近い形のものに換えてくれる環境を必要とするのが

欧州ブリードディスカスです。


そしてもう1つ、これは基本中の基本なのですが

魚が主にエラから排出するアンモニアを硝酸塩にかえる

硝化バクテリアが十分機能している環境であること。

なぜあえてこちらも加えたのかは

この後の内容を読んでいただければご理解いただけると思います。


上記の2つの濾過機能が十分かつ適切に機能している環境で

欧州ブリードディスカスは、先祖代々から生まれ育ってきた

ディスカスであると思ってください。




では何故日本ではこの2つの濾過環境を合わせて

作り上げるという考えがあまりなかったのでしょうか?




日本のディスカス飼育法は、黎明期からある時期に至るまで

異なった2つのディスカス飼育法の影響を強く受けてきたと考えております。

1つはディスカスを熱帯魚の王様として世に紹介した

欧州のディスカス飼育法。

硬水を軟水に変えるイオン交換機やRO、大規模かつ複雑なろ過装置が紹介され

欧州のディスカスブリーダーは日本のアクアリストの羨望の的でした。

ここで日本のアクアリストに器具信仰の高まり

良い装置を使えば良く飼えると考えるようになったのでしょう。

やがてディスカスの生産地はアジアへ。

アジアの飼育法は欧州のそれとは全く異なりました。

ディスカスを速く大きく成長させるために

毎日頻度高く給餌し、そして汚れた飼育水を

給餌後毎回汲み置き水で100%換水します。



ガラス面はその度にデッキブラシで清掃するのです。

濾過機は簡易的な上部フィルターに濁り取りの用ウールマットだけ。

たまに置き式のスポンジフィルター1個だけという仕様です。

勿論水槽内はアンモニア(水が弱酸性ですと有害性の低いアンモニウムイオン)で

満たされておりますが、魚はどうもそれには慣れるようです。



アジアのディスカスブリーダーの飼育法を模した

大量水換え飼育もディスカスの飼育には必要という考え方が

根付いてきます。ただし既存の濾過機はつけたままです。

日本では水道水が通常7.5あたりに調整され、水槽内で曝気されると

さらにアルカリへと傾いていくので

アジアブリーダーの飼育法は真似できません。

ディスカスがアンモニア中毒で死んでしまいます。




結果として日本では、マーケットで流通している既成の飼育器具、濾過機類を使用し、

大量換水をするアジア式飼育理論を組み合わせた方が主流になったのではないでしょうか。

ハイマニアになりますと、水槽は大きく、数も多くなり、濾過機も大型化、複雑化

さらに大量換水も行うという方向へ進んでいったと思います。



濾過機をつけているから有害なアンモニアはなくなります。

給餌して水が汚れたので、たくさん水を換えましょう。



この2つはどの飼育書をみても書かれている

ディスカス飼育論、いや観賞魚の飼育理論の2つの柱と

なっていたように感じます。

濾過機はヨーロッパから来たもの。

大量換水はアジア式。

我々は全く異なった環境で実践されている

2つの飼育法の一部の、メリット、デメリットもよく理解しないうちに

組み合わせて行うことがディスカス飼育のスタンダートとなっていったのです。


濾過機の本来の役割、使いこなし方も会得する前に

アジアのファームのやり方だからと

大量に給餌をして、大量換水をして安心していれば

いつの間にか濾過機が悪玉菌の大温床になっていて

ディスカスだんだん調子を落としていく。

これは欧州ブリードディスカスだけではなく

どのようなディスカスであっても

時を待たず上手く飼育できなくなる筈です。


という訳で、あの水換え中心の飼育法で、ロートターキスを上手く飼育できなかった方は

きっと水槽の濾過環境に不備があったと思われます。濾過に対しての認識不足とも言えますね。

水を沢山換えてれいるのに何でうまく飼育できなんだ??と思われていたでしょう。



上で挙げた善玉菌と硝化バクテリアによる濾過の働きをしっかり理解していただき

それをディスカスの飼育環境に十分に運用する事が非常に重要だという事です。

それが出来れば、大量換水飼育法は全く問題はないと私は思います。

いや問題ないどころか、むしろこれこそがヨーロッパブリーダーが

したくても出来ないうらやましい飼育法なのですから。




長くなりましたが、欧州ブリードディスカスを上手く飼育する方法 Part2

ご理解していただきましたでしょうか?

前回のパラサイトフリーのこと。今回の良い濾過環境のこと。

この2つが欧州ブリードディスカスを飼育するうえで

とての大事であるあるということなのです。






また、Part1とPart2をよく読んでいただければ

実は、欧州ブリードディスカスに限らず

どんなディスカスであれ、より良く飼育できるという事もご理解いただけると思います。

是非世界のディスカスを楽しんでくださいね。